訪問看護における入浴時の急変対応−冬季の入浴中の急変−

早いもので12月です。今年も残すところあと数日。
気温も段々と寒くなってきました。
冷えた体にお風呂!最高です。

ところで、
12月・1月・2月と入浴中の事故が急激に増加するということをご存知でしたか
 

一般的に寒い浴室や熱めのお湯に浸かると血圧が上昇、ぬるめのお湯に浸かると血圧が下降します。特に冬季は急激な寒暖差にさらされ身体に負担が掛りやすく心臓血管系の疾患や脳卒中を引き起こす危険性があります。

冬季は、入浴による負担だけでなく、冬場の寒さが危険であるということを考慮する必要があります。
そのため入浴前・中・後の様子を伺いながら介助・支援を行う必要があります。

今回は、入浴中に起こる血圧変動で気をつけるべき点を書いていきます。

1.入浴による循環変動

入浴した直後は血圧が大幅に低下し、心拍数は急激な上昇が生じます。
美羽(1993)

入浴中の死因の一つに、溺死があります。これは入浴による急激な血圧低下が起こり、一過性の脳虚血発作が生じ、意識障害が生じることに起因するようです。(稲村1995)

これらのことを考えれば、入浴の支援には以下の2点が重要だと言えます。
①血圧の変動が起こりにくい環境設定
②適切な観察・アセスメント

以下に、この2点について記載します。

2.血圧の変動が起こりにくい環境設定

入浴による血圧低下の前に、脱衣所での血圧上昇があります。
冬の時期は気温が低いため、血圧が上昇しやすいです。その状況で入浴すると急激な血圧低下が起こり、血圧の変動が大きくなります。

したがって、血圧変動を抑制するためには脱衣所と浴室の室温を高く設定する必要があります。
ヒーター・暖房などで脱衣所と浴室を高くして、血圧の上昇を抑えることができます。

3.適切な観察・アセスメント

入浴の死因に繋がりやすい血圧低下はショック症状を引き起こします。
ショック症状によって顔面蒼白・冷汗・虚脱・脈拍触知不可・呼吸の変化が生じます。

このような緊急時にはバイタルを測定し、状態を確認する必要があります。
しかし入浴介助中にはバイタルを確認する機器が手元にない状況が想定されます。

そのような状況では、脈拍の触知部位で収縮期血圧の推定を行うことが有効です

触知部位により触知可能な脈拍が異なります。
・橈骨動脈:80mmHg以上
・大腿動脈:70mmHg以上
・総頚動脈:60mmHg以上

例えば、
・総頚動脈のみ触知可能:収縮期血圧60mmHg以上,70mmHg以下
・総頚動脈、大腿動脈で触知可能:収縮期血圧70mmHg以上
といったように収取期血圧の推定を行うことができます。

このような視点を持つことで、入浴時の急変に対して迅速な対応をできると思います。

文責:成田圭吾

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